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Mark Stewart & The Mafia

—November.7.2018 18:29:00

MarkStewart_AdrianSherwood_London, 1985_credit_Beezer_Low

Profile

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1980年、マーク・スチュワートはNY滞在中に初期ヒップホップシーンに出会った。市内中心部の建設現場の喧騒とともに、このNYでス強烈な印象をもたらしたものが、初期ヒップホップのカット・アンド・ペイスト技術を間近に見たことで、これにひらめきを受けて彼の次なるプロジェクトが始まった。

そのコンセプトの実現に向けて、マーク・スチュワートとダブサウンドのパイオニアであるエイドリアン・シャーウッドは、コアなレゲエ・ミュージシャン連中に加え有名ホーン奏者でかの有名なアルファ・ボーイズ・スクールの卒業生でもある“デッドリー”・ヘッドリー・バーネットやアフリカン・ヘッド・チャージの首謀者であるボンジョ・イヤビンギ・ノアなどを続々と呼び込んだ。彼らの他にもスチュワートは、ランキング・ドレッドのバックでドラムを叩いていたチャーリー・“エスキモー”・フォックスや古くからの英国レゲエバンドMergerのメンバーで、それ以前にも ザ・ポップ・グループ やP.I.L.でも演奏したことのあるEvar Wellingtonにも声をかけた。この他にも様々な悪友や関係者がスタジオを訪れて大きな派閥となったのだが、そこにはGeorge Oban, Crucial Tony, Desmond ‘Fatfingers’ Coke や John ‘Waddy’ Waddington ( ザ・ポップ・グループ )などの名前も加わり、彼らを総称して“ザ・マフィア”マーク・スチュワートと命名された。この作品はその後長年の制作パートナーとなるエイドリアン・シャーウッドとの初コラボレーションで、まさに間違いのない作品となった。

スチュワートのNY滞在中に作ったアルバム素材には、Kiss FMのKOOL DJ Red Alertによる放送音声が挿入されたり、膨大で終わりのない無謀とも言える音源の量があり、制作に大混乱をきたしていた。また制作途上のカオス以上に、スチュワートは、様々なテーマ、疎外感、疑念、力、政治的レジスタンスなどと格闘し、果てしないミックス作業を施しながらも攻撃的で気まぐれな気質を一切崩すことはなかった。雷のような冒頭の音像から混沌と都会的な光が見えてくる「Liberty City」から素晴らしい壊れっぷりを見せる「Jerusalem」(ウィリアム・ブレイクのポエム傑出した演出)まで、本作は現在のディストピアに向けた縦横無尽なサウンドシステムが放つ音楽的爆発であり、当時からいまも存在し生き続ける楽曲群なのである。

スチュワートとシャーウッドがこのアルバムを制作した背景として、その当時の深刻な社会情勢や雇用問題によるプレッシャーやストレス、冷戦による不安や核兵器問題などによる恐怖などがあった。時代の空気に関するものの証として、このアルバムのレコーディングセッションはスチュワートとシャーウッドの指揮のもとアネルコ・パンクで一世を風靡したCrassのスタジオ、ザ・スタジオHQで行われたのだが、1980-81年当時、ブリストルやロンドン、英国の様々な地域で勃発していた暴動なども同時に起こっており制作に時折支障をきたすことがあった。

このアルバムから生じる混乱と言いようのない高揚感の中で、スチュワートとシャーウッドはこれらの煩雑さを象徴するものとして、この形のない絶えず変化を遂げる音楽を作りながら、マーク・フィッシャー (ピンク・フロイド, U2、ザ・ローリング・ストーンズのステージ・デザイナー) に「この時代の精神を完璧に捉えている」と言わしめた。驚くべき先見的な感覚を維持しつつ、Muteの創始者ダニエル・ミラー曰く「スチュワートの作品としての特性が見て取れる」と、 この作品は過激なまでの荒々しさが今でも輝き続けるアルバムなのである。

今回の作品は、必死な努力を持って探し出された未発表音源が集められたアルバムである。今回発表される未発表曲の数々『The Lost Tapes』によって紐解かれるのは、当時スチュワートとシャーウッドが一緒になって作業を行うことによって生まれていったこのアルバムの初期のアイデアと知られざるストーリーである。

十二分に熟成された攻撃的な「Intro」とともに、この未発表曲集がちらりと垣間見せるのはスチュワートがもともとウィリアム・バローズを意識したプロジェクトを行なっていたことで、最近フランスで無印のテープから発見された作品「May I」においては、今まで聞いたことのようような起承転結など存在しない生々しく壮大なダブを聞くことができる。他にも「The Power of Paranoia」の別バージョンと言える 「Paranoia」や 、 これまた未発表曲の「The Weight」では飾り気のない歌詞でスチュワートが長年武器貿易の反対運動に参画してきたことの息吹 が 感じることができる。その他この楽曲集に収録された中で決定的なものとしては、「Conspiracy」がスチュワートとシャーウッドの最初のコラボ作品ということ、そして「Jerusalem [prototype]」がスチュワートによる定番アンセムの歴史的な最初のバージョンである。

本作は 、マーク・スチュワート&マフィアの歴史における最重要作品であり、後に証明されることになるがブリストル・サウンドを作ったイノヴェーターたち( マッシヴ・アタック、ワイルド・バンチ、トリッキー、スミス&マイティ)に対する指標となるプロジェクトで、トレント・レズナーやナイン・インチ・ネイルズまでその影響を広げた。当時の作品群が今回一気に集められて感じるのは、これはスチュワートによる最大の声明ではないか、と言うこと。80年代から現在に至るまで本作は異形で強烈な一撃を伴った傑作である。

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