世界のダンス・シーンの中心を担ってきたThe Orbの軌跡
80年代後半のアシッド・ハウスが猛威を振るい、その後続くダンス・カルチャーの準備を固めていた時期に、オーブはアシッド・ハウスからの影響をアシッド・ハウスとは異なるスタイル=アンビエント・ハウスでダンス・ミュージック・シーンのパイオニアとして活動を続けてきた。
オーブの音楽は、アシッド・ハウス、テクノ、ダブ、レゲエ、アンビエント、プレグレッシヴ・ロック、ヒップホップをアンビエント・ハウスで表現した。オーブこそが、アシッド・ハウスを最初に拡張させたアーティストだ。
89年にKLFのジミー・コーティと共に結成されたオーブ。クラブ・カルチャーを背景に持つ今日のエレクトロニック・ミュージックのなかで、それがありきたりのダンス・トラックではなく、この音楽を少しでも前に進めようと既存のルールを破り、自由な表現で僕たちの耳と心を満足させようとするものであるなら、それは少なからずオーブの恩恵を預かっていると思って差し支えないだろう。
オーブ結成前
ブライアン・イーノのレーベルE&G にてA&R(80年中〜後)として活躍し、当時全く注目されていなかったデトロイト・テクノを世界で一番最初に紹介したのが彼。また並行してDJ活動も行っていた。ポール・オークンフォールドとはこの時期出会う。ポール・オークンフォールドのクラブ"Lond Of Oz"のChill Outミュージック専門の場所にてレジデントDJを勤める。(88年)
オーブ結成。1stシングルがいきなり全英チャート1位を獲得!時代の寵児に。
オーブはアレックス・パターソンを中心とするプロジェクトで、88年にKLFのジミー・コーティと共に結成し、その後数名の正式メンバーと、数々のアーティストとのコラボレーションによって活動を続けている。
89年にリリースされた記念すべきデビュー・シングルがいきなり全英チャートにてNo.1となる。これはエレクトリック系のナンバーとして初のナショナル・チャートNo.1獲得だった。
80年代後半の世界の音楽シーンを塗り替えたアシッド・ムーヴメント、そのムーヴメントの中から商業的成功を上げた始めてのナンバー。またこのシングルは、ミニー・リパートンの『ラヴィング・ユー』をサンプリングし、原題が『A Huge Evergrowing Pulsating BrainThat Rules From The Centre Of The Ultraworld』と長いため、通称"ラヴィング・ユー"として親しまれている。
1stシングルを収録した1st アルバム『アドヴェンチャーズ・ビヨンド・ザ・ウルトラ・ワールド』(91)は、ポップであり、クラブ・ユースでもあり、実験的でもあるという3つともに成立させた奇跡のアルバム。
KLFの歴史的名盤『チル・アウト』をプロデュース。
アレックス・パターソンは、オーブと並行して、ダンス・ミュージックで今なお燦然と輝くKLFの名盤『Chill Out』(90)をプロデュース、また、ピンク・フロイド『原子心母』をパロッた印象的なジャケットのアイディアもアレックスによるもの。
リミックス、プロデュース・ワーク。
リミックスやプロデュース活動も積極的にこなすアレックス・パターソン。特にプライマル・スクリームの最高傑作アルバム『スクリーマデリカ』(91)収録の 『ハイヤー・ザン・ザ・サン』をプロデュースし、そのリミックスを手掛けアシッド・カルチャーのアンセムになった。ブレイクビートのパイオニア、コールドカットをいち早く場適し、自身の曲のリミックスをオファーすることも。
オーブがリミックスを手掛けたアーティストは次の通り。 YMO、細野晴臣、ナイン・インチ・ネイルズ、コールド・カット、カン、KLF,マイク・オールドフィールド、リサ・スタンスフィールド、ロビー・ウィリアムス等。
またダブ・マスターのマッド・プロフェッサーをオーブの2ndアルバム『U.F.Orb』に収録されている『タワー・オヴ・ダブ』のリミキサーに抜擢。エレクトリック系アーティストとして彼を始めて起用したのもアレックスだった。その後、マッシヴ・アタックが『No Protection: Massive Attack Vs. Mad Professor 』で彼を起用し、マッド・プロフェッサーはダブのシーン以外でもより世界的に名前が知られるようになった。
2nd アルバムが全英アルバム・チャートNo.1獲得。
92年リリースの2ndアルバム『U.F.Orb』は全英アルバム・チャート1位を記録した。これもエレクトリック系アーティストとしては初の全英アルバム・チャートNo.1を獲得。また、シングル『ブルー・ムーン』は39分58秒もの長さで、ギネス・ブックにも「最も長いシングル曲」として認定された(全英チャートで8位)。また同年初の来日公演を行った。
93年グラストン・ベリー・フェスティヴァルで2日目のトリを飾ったオーブのライヴ・パフォーマンスは、後に何度となく語られ、アレックス・パターソン自身も「数あるライヴの中でも最高のものだった」と認めるほどだった。月明かりの中、グラストンベリー・フェスティヴァルのオーブは、この世のどこでも無い場所に大量の人間を運ぶことができる一台のマジック・バスだった。
その後、今度はYMO再結成ライヴ@東京ドームにてYMOのサポーティング・アクトを務めた。オーブはYMOの『Tong Poo』のリミックスもしている。(92)
「オーブの冒険〜第2章」。2ndアルバム以降、より革新的な音作りへ。
デビューから2ndアルバムまでの成功を経、3rdアルバム以降は、ポップ・ミュージックの枠組みを遥かに超えた独自の歩みをもって、より自身のアイディンティを深化させて行った。
3rd アルバム『ポム・フリッズ』(94)は、サイケデリック度がアップした作品となり、アレックス・パターソン自身、「最高傑作」に挙げているアルバムだ。アルバム・リリース後、エイフェックス・ツイン、オービタル、ディー・ライトをサポーティング・アクトに迎え、オーブの全米ツアーを実施した。4thアルバム『オルヴス・テラールム』(95)は最もアンビエント度が高いアルバムで、ローリング・ストーン誌のAlbum Of The Monthを獲得した。また、伝説のフェスRainbow 2000のヘッド・ライナーとして来日。5thアルバム『オーブリヴィオン』(97)は究極なまでのアンビエント色を出した前作から一転、ブレイク・ビーツ、ドラムン・ベースを導入した最もビートの強い作品となった。6thアルバム『サイドニア』(01)には、ロバート・フリップもギターで参加。 Fuji Rock Festival 99と、Summer Sonic 2001のSonic Maniaにてゴリラーズと共にダブル・ヘッドライナーを務めた。
移り変わりの最も激しいダンス・ミュージック界において、アシッド・ムーヴメントで最初にブレイクを果たし、その後のダンス・シーンを牽引してきたオーブの歩みは、ダンス・シーンの奇跡でもある。3rdアルバム以降の作品は、よりアグレッシヴに実験性の高い作品をリリースし続けてきたが、7thアルバムとなる『バイシクルズ&トライサイクルズ』は、1st&2ndアルバムの時の「ポップ」で「クラブ・ユース」で「実験性」のあるオーブに戻った作品となった。なかでもドラえもんのキャラクターをフィーチャーしたことで話題になった1stシングル『フロム・ア・ディスタンス』のポップ度は何よりそのことを証明している。
そして05年の前作『オーキー・ドーキー・イッツ・ジ・オーブ・コンパクト・ディスコ』、トーマス・フェルマンとの共同制作は、ポップな前作とは変わり、アンビエントでアシッドなダブハウスが前面に出た内容で、世界中のファンにOrb健在を告げた。
「オーブ最新章」。初心に帰り制作されたニュー・アルバム「ザ・ドリーム」
コンビ復活!
オーブのニューアルバムに参加しているユースは、このアルバムを語る上で欠かせない存在であると同時に、現在の音楽シーンを語るうえでも欠かせない最重要アーティストといえる。
ユースは、18歳の時に伝説のパンクバンド、Killing Jokeとして活動を開始。80年代の初めはBrilliantのJimmy Cautyと活動、The Orbで新しいジャンルを開拓、1992年世界で初となる、世界で最も有名なトランスレーベルDragonfly Recordsを設立した。
また、プロデューサーとしても有能な彼は、 The Verveの『Urban Hymns』をプロデュースしたほか、過去4回もBrit Awardにノミネートされている。ポールマッカートニーのファイアーマン名義のアルバムをプロデュースしたこともある。その後もKeith Flint, String Cheese Incident, Howie Dayなどのアルバムをプロデュースや、Killing Jokeのニューアルバムのレコーディングをするなど、精力的に幅広く活動している。2003年には精巧なダブを満載した傑作ダブアルバム『Orchestra Mystique』をリリースし、初の全国7ケ所に及ぶ来日ツアーを敢行している。今回、アレックスとのコンビ復活で、オーブに復活させたほか、最新ニュースとしては、ザ・カルトの復活アルバムのプロデュースを務めたのだという。このように、今まで真の音楽革新者としての名声を轟かせてきたユースはいまや世界のミュージックシーンを語る上で欠かせない最重要アーティストのひとりとなっている。
【ユースがプロデュースなどを手がけた主なアーティスト】
Killing Joke ・ The Orb ・ The Verve ・ Paul McCartney ・ Kate Bush ・ U2
Embrace ・ String Cheese Incident ・ Dido ・ Crowded House ・ Primal Scream
